最高裁判決のポイントと支援する会声明文

　７月１８日午前１０時３０分、最高裁判所は国側の不当な上告を棄却する判決を言い渡しました。長崎地裁、福岡高裁に続いて、最高裁でも三たび厚生省は断罪されました。
　１２年間もの裁判をたたかってきた松谷英子さんは、「とにかくうれしい。これは自分１人だけの勝利ではなく、被爆者全体の勝利です。」と記者会見で述べました。
　いうまでもなくこの勝利は全国の方々の支援の成果です。皆様方の長きにわたるご支援、本当にありがとうございました。厚生省はこの判決を厳粛に受け止め、直ちに松谷さんを原爆症と認定し、種々の病気に苦しんでいる多数の被爆者についても原爆症認定を行うべきです。
　私たちはこの判決を新たな一歩として厚生省の被爆者対策の根本的な見直しを求める運動をさらに発展させていく決意です。

　本日、最高裁判所は、長崎原爆松谷訴訟について、被告厚生大臣の上告を棄却する旨の判決を言い渡した。
　「私の障害は原爆放射線の影響によるものであり、原爆症と認定してほしい」という松谷英子の訴えに対して、長崎地方裁判所、福岡高等裁判所はこれを全面的に認めて厚生省の認定申請却下処分の取り消しを命じたのであるが、厚生大臣は不当にもこれに対し上告をしていた。
　この勝利は全国的な裁判支援の成果である。
　今回の最高裁判決は、この上告を理由がないとして棄却した。これは遠距離被爆者の被爆の実態を直視し、ＤＳ８６の機械的あてはめによる認定実務の不当さを指摘した長崎地裁及び福岡高裁の各判決の結論を支持したものであり、しかも、原爆症認定に関する初めての最高裁判決である点で、重要な意義を有するものである。厚生省はこの最高裁判決を厳粛に受けとめ、直ちに松谷英子を原爆症として認定し、更に、高齢化し、種々の疾病に苦しんでいる未認定の多数の被爆者に対しても、同様に原爆症認定をすべきである。我々はこの最高裁判決を新たな第一歩として厚生省の被爆者対策の根本的な見直しを求める運動を更に発展させていく決意である。

２０００年７月１８日

　　　　　　　　長崎原爆松谷訴訟弁護団
　　　　　　　　長崎原爆松谷訴訟を支援する会

　判決は、松谷さんの障害と放射線との因果関係をについて「一般人が確信を持ちうる程度」の立証が必要とし、従来の最高裁判決の枠は出ませんでした。しかしそれでも被爆の実態などを配慮し、被爆者の救済を指向し、全体として緩やかに因果関係を認定した判決として評価できます。

　厚生省が続けてきた、ＤＳ８６（被爆者の浴びた放射線量推定方式）を認定作業に機械的に当てはめることを疑問視しています。その理由として
�@ＤＳ８６が未解明な部分を含み、現在も見直し作業が続けられている
�A機械的適用では遠距離被爆者に発生した、脱毛などの急性症状を説明できない
を挙げています。最高裁でもこのことが判断されたことは、遠距離被爆者に原爆症認定の道を開くものであり、たいへん重要なことです。

　松谷さんの障害は、かわらによる打撃が原因だがそれだけでは説明がつかず、放射線を相当程度浴びたために障害が重くなって治療が必要な状態になったとして放射線との因果関係を認めました。